採用面接官向けーWeb面接の進め方と留意点

採用と就職活動の転換期 

新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響は、人事や採用に関わる仕組みに大きな混乱をもたらすマイナス面と、根本的に採用や日本的雇用慣行の在り方に大きな変革をもたらしました。

コロナ禍を経て、大学・企業・自治体における採用活動や面接の進め方には、大きな変化がもたらされました。
大学ではオンライン授業やオンデマンド講座の導入が進み、それに伴い、雇用側の対応や考え方にも変化が見られました。
特に、私の専門である「採用面接」についても、Web面接を中心とした新たな手法への対応が求められました。
今回は、コロナ禍の経験を踏まえた影響と、Web面接における留意点について整理いたしました。まずは、当時私が投稿した記事をご覧ください。

本稿への取材記事

日刊スポーツ新聞社より掲載記事
WEBやネットの面接・筆記試験も/就職戦線 
川村さんは「採用試験の根本を見直すいい機会かも知れない」という見方を示す・・・。https://www.nikkansports.com/info/4356joho/news/202004110000181.html
バイト経験で問われるのは「何を学んだか」
川村さんは「どこでアルバイトをしたのかではなく、アルバイトを通して何を学んだのかが・・・。https://www.nikkansports.com/info/4356joho/news/202004120000077.html
2021年5月11日「コロナ禍で就活に不安な学生にアドバイス」を掲載。
北海道新聞社『新型コロナウイルス対策の採用.就職活動』に掲載。3月3日
1日解禁説明会相次ぎ中止 就活生「出遅れる」 企業も危機感ネットでPR 新型肺炎で:北海道新聞 どうしん電子版 に掲載されました。

失敗しないWeb採用・面接試験 基本7ヶ条α

  1. Web面接の特性を踏まえた評価基準の見直し
    対面面接とは異なる環境であることを踏まえ、Web面接に適した「評価項目」および「評定票(評価シート)」を検討・再設計する必要があります。
  2. 受験者一人ひとりとの出会いを大切にする姿勢
    これまで同様、受験者との貴重な対話の機会として面接を捉え、Webであっても丁寧な対応を心掛けることが重要です。
  3. 通信トラブルへの備えと対応策の準備
    通信環境の不具合や接続トラブルが発生する可能性を想定し、代替手段や再接続の手順、連絡体制などの対応策をあらかじめ用意しておきます。
  4. 面接官による事前のWeb面接体験
    面接官同士で模擬的にWeb面接を体験し、ツールの操作や会話の間の取り方に慣れておくことが、当日の円滑な運営につながります。
  5. 評価視点の事前共有と基準の統一
    面接官全員で「どこを評価するのか」という視点や重点項目を明確にし、評価のばらつきを防ぐための共通認識を事前に持つことが大切です。
  6. 対面による最終判断の検討
    最終面接や人物評価に深く関わる場面では、可能な限り対面での面接を実施し、Webでは捉えにくい表情・所作・空気感などを確認する機会を設けることが望まれます。
  7. 採用活動全体の再構築の機会とする
    Web面接導入を単なる一時的対応とせず、採用活動全体のあり方を見直す契機とし、より質の高い、効率的かつ公平な採用プロセスの実現を目指します。

Web試験/面接を検討する

就職活動の解禁に合わせ、新型コロナウイルス感染のリスクを避けるため、会社説明会や筆記試験、面接などを含め採用活動が大きく変わりました
※自治体も、テストセンター方式からWEBテスティング方式(インターネット環境下にある自宅等のパソコンで受験が可能)に変える市も出てきました。
既に述べましたように、採用と就職試験のあり方も根本的に再検討する節目になりそうです。
今後も、リスクを避ける意味と利便性から、対面中心の就職試験から、Webを使用した筆記試験や、Zoomなどを活用した”選考や面接”を行うケースが一挙に増加します。
しかし、筆記試験、特に面接は直接会う機会を設け能力以外に、雰囲気、態度、表情、口調なども人事担当者や面接官は観察し評価を行ってきました。
そこで、学生も馴染みのあるZoomやGooglemeetなどを活用した面接を中心に新しい採用選考手法について提言します。
このサイトは雇用側の観点で作成をしておりますので人事担当者、面接官サイドに立って上記試験の解説をします。

選考・面接試験の流れ

会社説明会、筆記試験、面接試験は集合型から感染拡大を防ぐため、一人ひとりに対応したスタイルに軸足を移していますこの一人ひとりに対応した採用活動を行うケースを説明してゆきます。ただし、オンライン説明会などでは、より丁寧に質問などに答えるようにしましょう。
筆記試験=一人ひとりに行うために、各自のPC・モバイルによる試験を行います。
選考に関わる時間を省くことや、受験生の不安を取り除くために、より採用のコンセプトを明確にできる、職務遂行能力(コンピテンシー)や職務適性を測定する項目の明確な試験を行い、Web面接の特性に対応できるように選考プロセスを一貫させます。
しかし、1人で自宅などで受験する場合は、代理受験などのリスクも懸念されることから、対応策や対面による面接試験などの位置づけを重くするなど工夫が必要になります

面接試験=Web面接 

受験者の表情や所作を含めた全体像の把握は難しいため、具体的な職務内容に則した面接を中心に行います。この点は、従来の面接試験に慣れた面接官や人事担当者は理解を深めるようにします。
筆記試験にWeb試験を導入した場合、本人の資質を把握するため、面接試験の重みは増します。対面型の面接とは特性が異なることから、採用選考システム全体を再設計します。

Web試験で失敗をしない(特徴を知る)

Webを活用した採用スタイルは、基本的に対人関係を重視する仕事よりも、パソコンやネットなどを経由した仕事に向いています。
現在も職場や対面型の営業職では、コミュニケーション能力や微妙な人間関係の機微などを察する力などを求める組織が多いからです。
特に営業系など対人関係力を重視する企業は、Web面接を導入する際には、マイナス点を理解して導入することをお勧めします。
※ある企業は、1次選考から最終面接までWeb面接を行いました。交流会で内定者と会った人事担当者は、社風や職場に合わない人を採用していたことを改めて驚いてました。やはり、最後は会うべきだったと後悔をされていました。

事前準備:

通信環境やシステムの調整、日時、履歴書エントリーシートなど必要書類の準備をします。また、時間表と面接官の担当などを社内で明記します。
基本的には個人面接ですが、システムにより集団面接や討議も行えます。しかし、対面型の面接と異なり”自然なコミュニケーション”を評価することは難しくなる点を理解しておきます。
個人面接は、一人の受験者に面接接官は対応することになりますが、面接官は複数で実施も可能です。

❶通信環境の不具合も懸念されるため、不測の事態に備えて録画の了解を面接前に受験者に取るようにします。
❷録画情報は、個人情報と同じ扱いになりますので社内で個人情報管理規定に従ってください。また、自宅などのプライベートな空間についての言及は避けましょう。(個人情報の扱いは全面接官に注意をしてください)
❸受験者には、服装などは通常の面接試験と同じであることを告知します。
❹受験者を映すカメラの位置は、声が聞こえる距離が基本ですが、証明写真と同様に上半身が映るようにします。
❺マイクやイヤホンは、PCなどの映像トラブルや外の騒音などに備え使用を推奨します。
❻受験者には、静かな場所で一言一言に注意を払える環境を選ぶように案内します。事例としては、個室、学校、会議室などの静かに会話のできる場所を推薦します。
❼面接官側は、基本的に会議室などを利用します。緊急以外の社内放送などは入らないようにします。

スタート:

❶氏名など基本的な事項を確認します。代理受験のリスクを防ぐためにも、最終面接までに本人と会うことをお勧めします。
❷Web面接を進める留意点は、対面の面接よりゆっくりとハッキリと話すように心がけます。通信環境や機器の種類により音声が乱れることが起こりえるからです。
❸面接を始める前に、受験者とのウォーミングアップに数分間かけましょう。音声や画像の調子を確認するためです。また受験者との間の取り方も確認をします。
❹質問事例などは、求める要件に沿った質問をします。受験者の反応が遅い場合などは、機器の不具合を確認しながら進めます。Web面接では、会う面接とは異なる部分を意識しながら、面接を1つ1つ重ねてゆきます。
❺受験者には、対面の面接よりも、画面越しのWebを使う方が緊張感は少ないと予想され、ストレス耐性やコミュニケーション能力、などは対面と同等の評価は困難になると思われます。
❻受験者は、市販の就活面接マニュアルを準備し面接に臨むケースもあり得ます。そこで、対面の面接よりも面接官の面接力が試されことになります。できるだけ、評価項目に対する多数の質問を用意、若しくは拡大した展開質問を心掛けるようにします。
❼提出書類から読み取る情報に神経を遣うようにします。また、細かな点ですが語尾などにも注意を払います。

 

Web面接のメリット&デメリット

《メリット》
遠距離の人とも気軽に会える。会議室など場所を確保する必要がない。ウイルスの感染リスクが少ない。受験者のリラックスした状態が分かる。

《デメリット》

機器、通信環境によるトラブル。受験者の全体像、態度、表情などが読めない、臨機応変な対応力が観察できにくいなどがあります。
以上のメリット、デメリットを意識しWeb面接では面接を行うようにします。
対面中心の面接と異なり、緊張等のストレス耐性や柔軟なコミュニケーション能力などは評価が難しいことから過信せず、最終面接を行える状況になった時期に、時間を長めに設定をして改めて総合評価をします。
最終面接の場合、1人約15分から20分を1人20分から25分に延長をすることで、組織で求める職務適応力を持った受験者を発見し選ぶことが可能となります。

推薦する評価項目

Web面接の特徴から、評価項目として適切な項目は、PDCAについて沿った基本的な評価項目から、論理、言語、業界知識、バイタリティ、積極性、活動性、社交性など表面に出やすい項目と発言内容等から評価しやすい項目が中心となります。※業界や組織で必要となる要件は異なります。
逆に、Web面接のあまり向かない項目は、表面に出やすいコミュニケーション(話す・聴く)力、表現力、リーダーシップ、協調性、ストレス耐性など主に対人関係に関わる項目は、エントリーシートの分析や質問などを工夫を凝らすか、最終面接で受験者の全体像から評価をするなど工夫が必要です。

 

新しい時代の面接官トレーニング

Web面接を浸透させるために、従来の面接官トレーニングとは異なり、Web面接を活用した研修を行うようにします。対面の面接に慣れている面接官は、初めての面接形態に戸惑うと思われます。
機器の使い方も大切ですが、面接の進め方や評価の仕方などを具体的に説明を行うと同時に、体感していただくことをお勧めします。

従来の面接に比べ、評価できる内容は限られます。

例えば、面接室の入室から着席や挨拶など、一連の職場で行う所作を確認することも難しくなります。評価を再構築するか、最終面接の役割を変えることをお勧めします。
最終面接の位置づけが変わると、面接に参加するメンバーも役員を中心にしたものから、人事担当者も入れるなど大幅に変わる可能性があります。

 

最後

最終面接は、従来の組織風土の適応や将来性、配属などから最終判断をする場から、自社の職場で必要となる対人対応力やストレス対応力などを中心に評価も併せて行います。
これらにより、ミスマッチから起きる休職や早期退職を防ぐ対策にも繋がると期待されます。
以上のWeb試験・面接のマイナス面を補完することで、雇用側と学生側双方にとり納得感のある有意義な採用及び就職活動にびつけると確信いたします。自社にとり、どのような人を求めるのか、どのような選考システムが良いのかなど、最善な方法を改めて検討する機会にして欲しいと願います。
今回の提言等がみなさまの様々な活動に役立てば幸いです。

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